涙は動物が海から生まれた名残
まぶたと涙のお話
突然ですが、魚のまぶたや涙を見たことはありますか? アニメ映画などには、魚が目をパチパチしているシーンもありますが、本物の魚が瞬きをしている瞬間を見た人はいないと思います。また、釣り上げた魚が涙を流したという話も耳にしません。魚には、まぶたも涙もないのです。
まぶたにはいくつかの役目がありますが、一番大切な役目は眼球を保護することです。眼球には皮膚がなく、傷つきやすい角膜と結膜がむき出しになっています。まぶたはその角結膜を保護するとともに、瞬きによって涙の分泌と排出を促し、凸凹している角膜表面を滑らかにする涙の膜を作り、よく見えるようにしてくれます。
生物は、原始海洋で誕生しました。そして長い時間をかけて、両生類、爬虫類、鳥類・哺乳類と、陸を住みかとする動物が進化してきました。この間、エラは肺に、ヒレは手足にと、陸上生活に適した身体に変わりました。まぶたや涙腺・涙道もやはり、生物が海から陸に上がるときに作られた構造です。
涙は原始海洋の成分を反映したものであり、原始海洋は今の海水を約3倍に薄めた濃度であるといわれています。少しロマンチックに"涙は目の表面を潤す太古の海"という見方もできます。
そんな涙も人間の場合、角膜や結膜の乾燥を防ぐため以外に使われることがあります。そう、悲しいときや感動したときなどに、こらえきれずにこぼれてしまう涙。なぜこのようなときに涙が分泌されるのかよくわかっていませんが、興味深い研究がいくつかあります。
そのうちの一つは、涙には血液の何倍ものマンガンが含まれている、というものです。血液中のマンガンが増え過ぎると気分が不安定になることがあるので、涙を流すことはその軽減に役立っているというのです。また涙には、快感物質が含まれているとの報告もあります。泣くことにより気が楽になるのは確かです。